建築基準法
令第126条の2〜3

排煙設備の考え方
完全ガイド

設置義務の判断から設計基準まで、法規上の排煙の考え方を体系的に整理

01
排煙の目的と法令体系
火災時に発生する煙は視界を遮り、有毒ガスによって人命に直接危険を及ぼします。排煙設備は在館者の避難時間を確保するために設けられる設備です。
主な根拠法令
  • 建築基準法 第35条
    特殊建築物等の避難・消火設備
  • 施行令 第126条の2
    排煙設備の設置義務
  • 施行令 第126条の3
    排煙設備の構造基準
  • 国土交通省告示 第1436号
    排煙免除の詳細規定
消防法との関係
  • 建築基準法:避難のための排煙
    在館者の安全確保が目的
  • 消防法:消火活動のための排煙
    消防隊の活動支援が目的
  • 両法の基準は異なる
    双方を個別に確認する必要あり

02
設置義務の判断フロー
STEP 1|対象建築物の確認
以下のいずれかに該当する建築物・室は設置義務の検討対象となる
STEP 2|用途・規模の判定
区分 条件
特殊建築物 令別表第一(い)欄の用途で延べ面積 500㎡超
階数3以上 延べ面積 500㎡超(用途問わず)
採光・換気 採光無窓居室 または 排煙無窓居室
延べ面積 1,000㎡超の建築物の居室(用途問わず)
STEP 3|免除規定の確認
令第126条の2ただし書き・告示第1436号により免除できるかを確認(→ 03節参照)
STEP 4|設備方式の選択
自然排煙または機械排煙のいずれかを設計基準に従い設置(→ 04節参照)

03
設置免除の条件
免除規定は複数あり、条件・前提が異なります。室の用途・面積・防火区画の有無を必ず確認してください。
令第126条の2 ただし書き(法令直接免除)
  • 高さ31m以下かつ床面積100㎡以内の防煙区画された居室で、内装仕上が準不燃以上
  • 準耐火構造の床・壁で区画された機械室、倉庫等の居室以外の室
  • 学校・体育館・ボーリング場等(令別表第一(は)欄)
  • 階段・昇降機の昇降路その他これに類する部分
  • 機械製作工場等で不燃性物品を取り扱う工場等
告示第1436号(告示による免除)
  • 面積が50㎡以内の居室で、防煙区画+内装準不燃
  • 面積が100㎡以内の居室で、耐火構造の壁で区画+内装準不燃
  • 廊下その他主として通行・運搬に供する室
  • 30㎡以内の便所・洗面所・更衣室等
  • 準耐火建築物の床面積が200㎡以内の居室(内装準不燃)
免除を受けるための主な前提条件
  • 防煙壁(垂れ壁)による区画:天井面から50cm以上の防煙垂れ壁
  • 内装制限:壁・天井の仕上げが準不燃材料以上
  • 開口部:外気に面する窓等の有効換気面積の確保

04
設計基準(自然排煙・機械排煙)
自然排煙
  • 排煙口の位置
    天井または天井から80cm以内の壁面に設置
  • 有効開口面積
    防煙区画の床面積の1/50以上
  • 操作装置
    床面から80cm以上・1.5m以下に手動開放装置
  • 排煙口の大きさ
    有効面積 0.5㎡以上(1/50に加算する場合)
有効開口面積 ≥ 床面積 × 1/50
機械排煙
  • 排煙機の性能
    毎分120㎥以上(かつ防煙区画面積×1.5以上)
  • 排煙口の設置
    天井または天井から80cm以内。各防煙区画に1箇所以上
  • 風道(ダクト)
    不燃材料製、煙層下端より下に開口させない
  • 排煙機の起動
    自動火災報知設備または手動による起動
  • 予備電源
    停電時も30分以上作動できる予備電源が必要
排煙量 ≥ MAX(120㎥/分, 区画面積 × 1.5㎥/分)
自然排煙・機械排煙の比較
項目 自然排煙 機械排煙
動力 不要(温度差・風力利用) 排煙機(ファン)必要
コスト 低い 設備費・維持費が高い
信頼性 気象条件に左右される 安定した排煙量
高さ制限 原則 31m以下に適用しやすい 高層でも適用可
点検 比較的容易 定期検査が必要

05
排煙区画・防煙垂れ壁
排煙設備は防煙区画(500㎡以内)ごとに有効に機能するよう設計します。防煙区画は防煙壁(垂れ壁)で区切ります。
防煙区画の原則
  • 1区画の床面積:500㎡以内
  • 防煙壁の種類:
    間仕切壁、天井面から下方に突出した垂れ壁
  • 垂れ壁の垂れ下がり寸法:50cm以上
防煙垂れ壁の素材
  • 固定式:ガラス、不燃材等の不燃材料
  • 可動式(防煙スクリーン):
    煙感知器連動で自動降下
  • 煙感知器との連動が必要な場合あり
設計上の注意点
  • 排煙口は防煙区画の最遠部から30m以内
  • 廊下と居室は原則として区画を分ける
  • 吹抜け・アトリウムは特別な検討が必要

06
特殊な取扱い・よくある疑問
内装制限との関係
  • 内装を準不燃以上にすると免除区画の対象になりやすい
  • 居室・廊下の仕上げ材の確認が判断の鍵
  • 建具(ドア)は内装制限の対象外が多い
共同住宅の特例
  • 住戸内は原則免除対象(居室100㎡以内+準不燃)
  • 共用廊下・エレベーターホールは別途検討
  • 特定共同住宅では消防法の規定も確認
高さ31mを超える建築物
  • 令第126条の2の規定とは別に特別避難階段に排煙設備が必要
  • 自然排煙が使いにくく、機械排煙が主体となる
  • 非常用エレベーターの設置義務も同時に発生
無窓居室の扱い
  • 採光無窓:面積×1/20未満の採光窓
  • 排煙無窓:床面積×1/50未満の排煙開口
  • 無窓居室は面積に関わらず排煙設備の設置義務が生じる

設計時の確認チェックリスト
確認事項 根拠
建築物の用途・延べ面積・階数が義務対象か 令126条の2第1項
免除規定(法令・告示)が適用できるか 令126条の2ただし書・告示1436号
防煙区画が500㎡以内に分割されているか 令126条の3
防煙垂れ壁が50cm以上確保されているか 令126条の2
排煙口の位置・有効開口面積が基準を満たすか 令126条の3
消防法の排煙設備(消火活動用)と整合しているか 消防法施行令第28条
特定行政庁の取扱い・指導事項を確認したか 各特定行政庁
本資料は建築基準法・同施行令および国土交通省告示(令和時点)に基づく一般的な解説です。実際の設計・申請においては、特定行政庁の取扱い・最新法令を必ず確認してください。